洋服屋、とくにバイヤーはヲタクでないとダメだと思う。
自分の洋服屋としての基礎を作ってくれた人がいます。今でも尊敬している人なのですが出会った時からその方は買い物オタクで信じられないくらいの量の洋服を買い、仕事をしている時もご飯を食べている時も洋服の話しかしない人で、洋服が似合う体型を維持するためにジムに通い、超多忙なのに自ら展示会に足を運び自分の目を信じて選んでいました。キャリアの中で出会ってきた人の中でもトップクラスの洋服オタクです。ヴィンテージからストリート、モードまで幅広いジャンルを自分の物差しでものを見て取り入れていました。一緒にアメリカなんかも連れて行ってもらったりして、生意気なところしか取り柄がなかった自分に洋服/仕事というものを教えてくれました。
当時の自分はそこまで洋服が好きな人が選んだ洋服ならきっとバカ売れするだろう!と思っていましたが全くの逆でずっとラックの片隅に残っていることが多く、最後の最後で洋服好きのオタクがセールでピックするという不思議な流れでした。
時が経ち自分はお店を開けて、ここ数年の私はファッションという言葉さえ少し嫌気がするというかゾワっとしてしまい、洋服屋でありながらもファッションではなくてスタイルを売りたいと思うようになりずっとモヤモヤしていて、そんな時ふとその方のことを思い出しました。
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アートは売れなくては何の意味もない。
Andy Warholの言葉です。
売れすぎても消費されるだけですぐに終わるけれど、売れなすぎももちろんダメでその狭間が一番かっこいい。
今シーズンはBLACKBIRDの洋服も少しは認知が広まったのかちらほら即完する品番も出てきて、お店のオープン当初の記憶が蘇りました。
発売日の朝に並んでくださったお客様に”並ばないでもらっていいですか?”
と伝えクレームになったことを思い出しました。
もちろん自分たちの洋服を受け入れてくれている事実はとても嬉しいのですが、買い物自慢のインスタグラムが流行っていた時代ですから、それが恐怖でもあり自分の生活がきつくても本当にBLACKBIRDの洋服を必要としている方の手に渡って欲しく、時間をかけて昔からの顧客さんにこっそりと販売していました。
その時、朝からお店に並んでいたお客様は今は一人も残っていません。
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定番と提案
不滅のアウトプット。
定番は今までのデータをベースにすればある程度どうにかなりますが、提案は目利き/オタクの嗅覚が必要です。その方から教えてもらったこの2軸はうちのお店のラインナップもオープン当初から念頭に置いて今があります。
先日通勤用のバックパックとウォーキングシューズを買おうと思ってとあるお店のオンラインを見ていたのですが、自分が欲しかったアイテムがどちらも扱ってなく、定番商品だけがフルサイズでラインナップされていました。少し悲しくなりました。自分の目が劣ったのかと他のお店も数件見てみると扱っているお店はちらほらあって全体のラインナップを見てみると大体バイヤーの物差しで仕入れをしているだろうなぁという品揃えで、自分は買い物をするならこういうお店で買いたいと思いました。
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そして気がつけば私の周りにはオタクしかいなくなりました。
どの年代の洋服のネタや、音楽を投げかけても十中八九打ち返してくるセールス。
家具が好きすぎて普通の家具屋さんより遥かに知識があるPR。
普通のバイヤーの3年先が見えているかのようなキテレツ要素満載の家具屋。
自分もそんな方々に負けないように、
BLACKBIRDの007の企画も終盤に差し掛かり、一つでも多くの”狭間のポジション”の洋服を企画できるよう今日も頑張ります。
みなさまも毎日お疲れ様です。

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